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《講座レポート》北海道札幌市中央区北二条西 道特会館
(2024.6.22~23 「排泄トレーナー養成コースステップI」バージョンアップ版)

今回の札幌は、夏までに開催する最後の会場となりました。

九州・本州が梅雨入りした中、雲は多めでしたが風も心地よく天候に恵まれた2日間となりました。会場である道徳会館はあの有名な時計台からも近く、1時間ごとに時をつげる鐘の音にレトロな風情を感じ、気持ちが和みました。

ただ残念なことに、介護現場で「新型コロナウイルス感染症」の集団感染が発生し、参加予定の方の中にも断念された方がおられたことです。感染症との闘いに終わりはありませんが、パンデミックを起こすような感染症が無くなることを願っています。

会場の道徳会館からも近い有名な時計台

その一方で、感動する話もありました。
遠く旭川から(札幌までJR特急で1時間半)参加して下さった方々がおられ、旅費交通費を抑えるために、車でひたすら下道を走って来られたと涙ぐましい努力をされていたのです。明るく楽しく話をして下さるので、元気パワーがもらえ、やる気に一層拍車がかかりました。

アルケア株式会社様によるIAD(失禁関連皮膚炎)の講義と体圧分散の実演

アルケア(株)さんの介助補助手袋の体験
アルケア株さんの介助補助手袋の体験

今回は、アルケア株式会社の大橋様から

1. IAD
2. ポジショニング

の講義と実演、さらには実際にスキンケア用品のサンプルを用いて使用方法等教わりました。

IAD(失禁関連皮膚炎)については、講師の鈴木先生からもレクチャーを受けていましたが、実際にケアの場面で使用する商品(清拭・洗浄・保湿・保護)を使っての実演、参加者もサンプルをいただいて体験できたことで、現場でも即活用できると確信しました。

ポジショニングは、クッションや介助補助手袋(リジャスト・グローブ)を使用した時の身体への圧のかかり方を映像で確認することができ、使用前・使用後の違いを知ることができる貴重な経験となりました。

皮膚の基礎からさらに高齢者の皮膚の特徴を理解、そこから実際にスキントラブルがおきた時に現場でできる処置や対処法を学び、たとえ今すぐそのような場面に遭遇しなくても、今回の一連の流れを見聞きしたことでイメージがつかめたのではと頼もしくもありました。

アルケアさんの商品を実際に試して
アルケアさんの商品を実際に試して
アルケア株式会社商品パンフレット・試供品の一部
アルケア株式会社商品パンフレット・試供品の一部

山本五十六の格言(名言)の中に、
「やってみせ 言って聞かせて させてみせ ほめてやらねば 人は動かじ(続きあり)」と言うのがあるのはよくご存じだと思います。

現代語訳すると「まず自分が実際にやって見せ、理解するまでしっかりと説明し、そして実践させてみる。そしてできたことを褒めてあげなければ、人を動かすことはできない」というような感じでしょうか。今回の経験は、まさにこの格言の真髄に触れたように思います。

参加された方の感想

  • 人体の構造を理解することで、排尿・排便のしくみや失禁が起こる原因等、知識が深まりました。興味深く楽しく受講させていただきました。
  • 施設入居者の大半が下剤を使用していますが、その方の生活暦にあった対応ができると快適な排便につながりそうです。
  • 講習を聴いていて、理解していないことが多かったり、間違った認識をしていたこともあり改めて勉強になり、仕事にも活かせそうだと思った。
  • 介護の基本でもある排泄ですが、そこからさらに深い勉強をすることにより、皮膚の状態の観察も根拠をもってケアができそうです。とても有意義な時間をありがとうございました。
  • 皮膚の構造から知ることで、トラブルに対するケアの方法を理解することができました。
  • 今回の講習は、実習もありとても楽しかったです。ワセリンの使い方は、利用者様に応用できると思い、とても助かりました。お二人の先生の講習はとても勉強になり、是非来年も参加させていただきたいです。
  • IADについて知らない事が多かったので、今回勉強でき本当に良かったです。今までおむつも自分で当てたこともなく、その体験がとても身になりました。2日間すごく楽しく、ためになる事ばかりで感謝しています。
  • 今回の受講は本当に勉強になり、楽しく学べました。「ステップⅡ」がありましたら、参加させていただきたいです。2日間本当にありがとうございました。
鈴木先生のIADの講義の様子
鈴木先生のIADの講義の様子
テスト後の回答風景
テスト後の回答風景

変えてはいけないもの、変えて行かなくてはならないもの

福祉・介護業界の長い歴史の中で、大きな転機となったことの1つに、1987年に制定された「社会福祉士及び介護福祉士法」によって、介護福祉士は介護業界唯一の国家資格となったことが挙げられると思います。

参考までに、厚生労働省のホームページの「介護福祉士の概要について」では、「介護福祉士は、同法に基づく名称独占の国家資格であり、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であって、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る)を含む)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者をいう」と記載されています。

さらに、1996年3月末で、「病院付き添い婦」制度が健康保険法の改正で廃止となり、それまで入院患者の身の回りのお世話をしておられた家政婦さん達の付き添いが禁止になったのです。

その当時働いておられた方々が、そのまま看護・介護助手となられたケースも多く、おむつ交換(布おむつもあった)などのケア技術は優れたものを持っておられました。

その一方で、時代とともにそれら看護・介護の現場で働く方々には、経験だけではなく医療・介護での専門知識や技術が求められるようになってきました。さらに福祉用具の発展等により、今まで通りのやり方に固執するだけではなかなか難しい局面も多くなって来ました。もちろん昔ながらのセンスや立ち回り方が必要な時もありますが、それらをベースにしながらもさらに改善が求められる時代になってきました。

旧態依然な考え方ではなく、私たち自身が初心に立ち返ると同時に新しい風を入れることも必要なことだと、この福祉・介護業界に長くいる自分は特に痛感をしています。

コロナウイルス感染症が5類感染症に移行 (令和5年5月8日付け) して1年が過ぎようとしている今、学ぶ機会や新しい技術の習得、新たな情報等々、一気にあふれ出ていますし、チャンスも多くなって来ています。福祉・介護の世界にいらっしゃる皆様にとっても、少しでも明るい展望が開けるよう、これからも前を向いて進んでいけたらと思っています。

今回の総括

今回参加して下さった皆様から、利用者様を温かく見守り寄り添っておられることが伝わってきて、もし私の両親が生きていたら皆様にお願いしたいと思いました。

感想を読ませていただき胸が熱くなると同時に、2日間ともに学び体験できたことが宝物であり、皆様の笑顔、帰り際の一言、すべてが次なるステップのためのパワーの源となりました。心より感謝申し上げます。

また来年お目にかかれることを楽しみにしています!ありがとうございました!

修了証授与された方々 笑顔で
修了証授与された方々 笑顔で記念撮影
公開日 : ​排泄トレーナー養成講座