2024年6月8(土)~9日(日)、江島杉山神社内にある杉山和一記念館の研修室をお借りして開催させていただいた「排泄トレーナー養成コースステップI」バージョンアップ版の講座レポートをいたします。
と、その前に…少しだけ今回のセミナーの舞台となりました墨田区の両国、千歳という街についてお話させてください。
歴史を感じる街 両国と千歳
両国は、ご存知「相撲とちゃんこの街」と言われるように、駅構内には歴代の横綱の写真や手形が飾られており、改札を出ると国技館、江島杉山神社に向かう道中には、至る所にお相撲さんの手形の像や、相撲部屋、ちゃんこ鍋のお店などがあります。
さらには「すみだ北斎美術館」「勝海舟生誕の地」「芥川竜之介生育の地」「小林一茶居住の地」「吉良邸跡・本所松坂町公園」等々、うごめいた歴史を感じる事ができるとても趣き深い街、という印象で、会場へ向かう道中は、さながらプチ観光といった雰囲気で大変心躍る時間となりました。
そして、今回の「排泄トレーナー養成コースステップI」バージョンアップ版セミナーの舞台となります、千歳の江島杉山神社も大変由緒ある神社で、御祭神は「市杵島比売命(弁財天)」「杉山和一総検校」。五代将軍徳川綱吉が、杉山和一(盲人であった)を「扶持検校」として召し抱え、日夜自分の治療に当たらせたとか。ちなみに和一は61歳でこの地に「鍼治講習所」を開き、それが世界初の盲人教育の場であったと御由緒書には記されています。
そのような由緒と歴史ある施設をお借りして講座開催できましたこと、
理事長の吉田勉先生(公益財団法人杉山検校遺徳顕彰会 理事長 押上鍼灸院院長)並びに関係者の皆様のご厚意に深く感謝申し上げます。
他業種の方々による有意義な意見交換
講義内容は前回の霞ヶ浦医療センターで行なったものとほぼ同様となりますが、今回は看護師さんやヘルパーさん、さらに福祉業界(メーカー)にお勤めの方であったりと、職種もばらばらでそれぞれ立場の違う方々が参加して下さいました。
そのため、それぞれご自分が抱えている疑問や現状の問題点などがお立場によって様々で、多面からの質問や議論ができ、中身の濃い有意義な時間を共有させていただくことができました。下記は当日いただいたご質問を受けての講義の一部をご紹介します。
〔例〕排便コントロールに取り組みたいと言われているのだが…
よく耳にするのは
- 便が出ないと困るから(腸閉塞になったら困る)
- 3日便が出ていないと一律に緩下剤を飲ませているが、出ないときには量を増やす
そうすると、ダラダラの便が続きおむつ交換が大変 - 便が出ないと認知症の方は不穏な動きをされるから
- お腹が張って苦しそうだから etc.
そもそも排便をコントロールするとはどういうことでしょうか?尿をコントロールするとは言いませんよね。(尿コントロールについて知りたいと聞かれたことはありません)その違いを理解するためには、それぞれのメカニズムを知っておくことが大事で、そこが押さえられていないために取りあえずの目先対応で終わってしまい、長続きしないのだと思います。
便は、排便に関与する反射と神経系、さらには様々な要素(タイミング 食・住環境など)が絡み合って排出されます。尿のように排尿したいときに出るというものではありません。そのあたりの基本を知って、なぜ排便コントロールに取り組みたいと思っているのか、何から取り組むことができるか等々整理して考えることが重要になってきます。決して、-3日で緩下剤を服用するがベストではないですよね。(詳細は、講座に参加して下さいね)
参加された方の感想
- 興味深い内容で、しかも基礎から応用まで分りやすく楽しく学ぶ事ができました。
- 先生方の知識がもっと必要としている方に届くと良いと思いました。
- 本には載っていない事もたくさん聞けて(脱線話と言っておられましたが)、それがまた面白かったです。
- 学ぶ事の大切さを改めて感じました。日進月歩、胡座をかいていてはいけませんね。次回も参加したいので、是非宜しくお願いします。
- 2日間非常に充実した内容で、感謝の気持ちでいっぱいです。実際に課題をいくつか抱えていたので、沢山の質問にもお答えいただき助かりました。
- 上司は新しい事を取り入れようとはしませんが、自分は学んだ事を伝えていきたいと思います。自分が上に立ったときにはご利用者さま目線でケアできる職場にしたいと思っています。
私たちは、ともすると自分たちが学んだ時代のまま知識を深める事を忘れ、それがまかり通っているかのような錯覚をすることがあります。例えば、褥瘡対策です。30年位前までは常識とされていた「創面を乾燥させる・周囲をマッサージする・円座を使用する」は、今では禁忌になっています。
それ以外でも、トイレ環境が家庭では洋式トイレとなり、男性の排泄環境に変化が見られるようになってきました。
さらには、脱毛問題です。若い人たちの間では全身脱毛も違和感がないようで(身だしなみ?)、そうなってくると何十年後かには、「陰毛に便が付着して陰部洗浄が大変」とかの問題もなくなるのでしょうね。実はこんなことを脱線話の中で話していました。
毎回、私自身が多くの気付き・学びを得ることができ、明日への原動力となっています。応援して下さっている皆様に、これからも何か1つでも新たな知識やお役に立つ情報をご提供していければと思います。
改めて、ご参加して下さった皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。